執筆: 魚住琢(株式会社SAL 代表取締役)
複数の部門やブランドがSNSを運用していると、アカウントごとに担当者や承認方法が異なりやすくなります。全社のアカウント一覧、投稿の最終承認者、問題が起きたときの意思決定者を確認できない場合は、担当者個人の注意だけでは防げない問題があります。
SNSガバナンスとは、投稿を厳しく制限することではありません。平常時と問題発生時に、誰が情報を確認し、誰が決め、誰が作業し、誰が記録するかを定めることです。
この記事では、実務を整理する一例として、SNS運用を「予防・検知・対処・復旧」の4つに分け、社内、ツール、外部支援の役割を整理します。
株式会社SALのSNS常駐支援では、戦略・企画、会議参加、コンテンツ制作、投稿、監視、レポート、改善のうち、必要な範囲を案件ごとに設計します。法律に関わる論点は社内法務または外部の専門家へ確認し、その確認を踏まえた投稿、謝罪、情報開示などの最終判断は企業側が行います。
最初に確認する4つの情報
新しいルールを作る前に、現在の運用を確認します。
- 会社と各部門が運用するSNSアカウント
- 各アカウントの管理者権限と担当者
- 投稿を企画、制作、承認、公開する人
- 問題が起きたときに連絡する人と決定する人
会社が把握していないアカウントや、退職者の個人端末だけで管理されているアカウントがあれば、権限と連絡先を会社管理へ移します。
SNSガバナンスを4つの役割に分ける
| 役割 | 平常時に決めること | 主な担当 |
|---|---|---|
| 予防 | 投稿ルール、承認条件、権限管理 | 運用部門、広報、必要に応じて法務 |
| 検知 | 投稿後の確認、反応や問い合わせの共有先 | 運用担当者、必要に応じてツールや外部支援 |
| 対処 | 投稿停止・修正・削除、社外説明の判断 | 経営、広報、法務、関係部門 |
| 復旧 | 経緯の記録、原因確認、ルールと体制の見直し | 経営、広報、関係部門 |
予防と検知は、ツールや外部支援を組み込みやすい領域です。ただし、法律に関わる論点は社内法務または外部の専門家へ確認し、その確認を踏まえた投稿の最終承認、謝罪、情報開示、社外への説明は企業側が判断します。
内製・ツール・外部支援をどう組み合わせるか
| 方法 | 担いやすいこと | 社内で決める必要があること |
|---|---|---|
| 内製 | 社内事情を踏まえた企画、承認、問題発生時の判断 | 担当者、決定権、連絡経路 |
| ツール | 投稿や言及の収集、条件に合う情報の通知 | 何を確認し、通知後に誰が判断するか |
| 外部支援 | ルールや役割の整理、制作、投稿、集計、改善提案 | 依頼範囲、最終承認、問題発生時の決定 |
社内が意思決定を持ち、ツールと外部支援で作業や情報整理を補う形は、一つの組み合わせ方です。
投稿の承認フローを分ける
すべての投稿を同じ承認ルートに乗せると、日常的な投稿にも時間がかかります。一方、すべてを担当者だけで判断すると、影響の大きい投稿を見落とすおそれがあります。
そこで、投稿内容を影響の大きさに応じて分けます。次のA・B・Cは、社内ルールを作るための出発点です。
| 区分 | 投稿の例 | 承認の例 |
|---|---|---|
| A | 確認済みの情報を使った日常的な投稿 | 運用担当者が確認 |
| B | キャンペーン、外部の人物・作品を使う投稿、時事的な話題 | 部門責任者が確認 |
| C | 経営メッセージ、謝罪、社会問題への言及、重要な顧客対応 | 経営、広報、必要に応じて法務が確認 |
ただし、日常的な投稿でも、商品の効果や価格に関する表示、著作権・肖像権などの権利、個人情報・機密情報、業界固有の規制に関係する場合は、上位の確認へ切り替えます。
区分名より重要なのは、どの条件で確認先を変えるのかを社内文書に残すことです。
問題発生時に確認したい5つの機能
平常時の承認フローとは別に、問題発生時の連絡と判断の流れを決めます。この記事では、次の5つの機能が社内で確保されているかを確認します。特定の人数に揃える必要はありません。
- 意思決定: 投稿停止、修正、削除、謝罪、情報開示を決める
- 広報: 社外への説明と問い合わせ対応をまとめる
- 法務: 法律に関わる論点を社内法務または外部の専門家へ確認する
- SNS運用: アカウントの状態を確認し、決定された作業を行う
- 記録: 発生したこと、確認した情報、判断と対応の時系列を残す
一人が複数の機能を担当しても構いません。担当者が不在のときの代理と、社内で使う連絡経路も決めます。
外部支援は、状況整理や運用作業を補助できます。ただし、外部が独自に謝罪や情報開示を決める体制にはしません。
AIに任せることと、人が決めること
AIは、投稿文の初稿、社内ルールとの照合候補、反応の分類、数値集計、レポートの下書きなどを補助できます。AIが示す内容は、最終判断ではなく、人が確認するための候補として扱います。
出力が事実に合っているか、文脈やブランド方針に合うか、権利や個人情報に問題がないかは人が確認します。法律に関わる論点は社内法務または外部の専門家へ確認し、投稿の最終可否、謝罪、情報開示などは企業側が決定します。
外部支援を依頼する前に決めること
- 外部が参加する会議と共有する情報
- 企画、制作、投稿、確認、集計の担当範囲
- 対象となるSNSとアカウント
- 通常時の連絡先と問題発生時の連絡先
- レポートの内容と頻度
- 社内に残す最終承認と意思決定
「監視」「危機対応」などの言葉だけで判断せず、対応する時間帯、確認する対象、通知後の担当、契約に含まれないことまで確認します。
株式会社SALのSNS常駐支援
株式会社SALのSNS常駐支援は、月額40万円〜、最低契約期間6ヶ月です。戦略・企画、会議参加、コンテンツ制作、投稿、監視、レポート、改善の範囲を案件ごとに設計し、出社とオンラインを組み合わせて支援します。
SNSガバナンスに関する支援では、投稿ルールとリスク区分の整理、承認フローの設計、投稿の確認、レポート、社内で判断するための情報整理など、必要な範囲を開始前に確認します。対応時間、対象SNS、会議頻度、レポート頻度も契約時に定めます。
法律に関わる論点は、お客様の社内法務または外部の専門家へ確認します。その確認を踏まえた投稿の最終承認、謝罪、情報開示、説明責任はお客様側に残ります。24時間の監視、即時対応、法律相談などは、このページに記載した料金だけで一律に提供するものではありません。
まず4項目を点検する
- 全社のSNSアカウント、管理権限、担当者を一覧にする
- 企画、制作、承認、公開、投稿後の確認を誰が担うか書き出す
- 投稿内容によって確認先を変える条件を決める
- 問題発生時の意思決定、広報、法務、運用、記録の担当を決める
空欄になった役割が、社内で決め直す部分、またはツールや外部支援で補う部分です。
よくある質問
Q. ガイドラインを作れば問題を防げますか?
ガイドラインだけですべての問題を防ぐことはできません。アカウント権限、承認条件、投稿後の確認、問題発生時の連絡と意思決定まで、実際の運用に合わせて決めます。
Q. 承認を増やすと投稿が遅くなりませんか?
すべての投稿に同じ承認を求めると時間がかかります。投稿の内容や影響に応じて確認先を分け、上位の確認へ切り替える条件を事前に決めます。
Q. AIで投稿を確認すれば、人の承認は不要ですか?
不要にはなりません。AIはルールとの照合候補やリスクの可能性を示す補助に使い、事実、文脈、ブランド方針、権利、公開可否は人が確認します。
Q. 問題発生時の担当は何人必要ですか?
この記事の整理例では、意思決定、広報、法務、SNS運用、記録の5つの機能があるかを確認します。企業規模に応じて、一人が複数の機能を担当することもできます。
Q. SALへ依頼した場合、投稿の最終承認はどちらが持ちますか?
最終承認はお客様側に残ります。株式会社SALは、判断基準や承認フローの整理、運用、情報整理など、契約で合意した範囲を支援します。

